子宮がん検診で異常を指摘された
子宮がん検診で異常を指摘された

子宮頸がん検診で「異常」や「要精密検査」と言われても、がんと診断されたわけではありません。細胞診とHPV検査の結果を確認し、必要な方にコルポスコピー(腟拡大鏡診)と組織診を行います。ASC-USの方は、当院では原則としてまずHPV検査を行います。生検が必要な方は、適応があり条件を満たす場合、初回受診日にコルポスコピー下生検まで進めることができます。
日本の全国がん登録などを解析した研究では、2019年に子宮頸がんと新たに診断された方は10,879人、2021年の死亡者数は2,894人でした。年が異なる数字であり、同じ患者さんの転帰を表すものではありません。別の国内研究では、20~59歳の罹患率が1985~2015年の観察期間中に上昇し、特に20~30歳代で増加が目立ちました。後者は地域のがん登録を用いた傾向分析で、近年の全国罹患率をそのまま示す値ではありません1,2) 。
子宮頸がんの大部分には高リスク型HPVが関わります。HPVは性行為などに伴う皮膚・粘膜の接触を通じて感染し、一度の陽性だけでがんの発症が決まるわけではありません。コスタリカの前向き研究では、発見された高リスク型HPV感染の67%が12か月以内に検出されなくなりました。一方、同じ型の感染が続く場合は高度病変のリスクが上がり、特にHPV16型の持続感染でその傾向が強く報告されています3,4,5)。
感染が持続した一部の方では、子宮頸部の細胞に変化が起こり、CIN1、CIN2、CIN3と呼ばれる病変が見つかることがあります。すべてが順に進行するわけではなく、軽度の病変は自然に改善することもあります。一方、CIN3を未治療のまま長く置いた歴史的コホートでは浸潤がんへの進行が確認されています。異常の程度に合わせて、経過観察と治療を選ぶことが大切です6,7)。

図1 HPV感染と子宮頸部病変の関係を示す概念図4,5,6,7)
細胞診は子宮頸部から採取した細胞の形を調べ、HPV検査は高リスク型HPVを調べます。HPV検査を用いた検診では、適切な追跡と精密検査を組み合わせることで浸潤がんの予防効果が示されています。検診方法と受診間隔は年齢や自治体の制度で異なります。出血などの症状がある場合は、次の検診を待たずに婦人科をご受診ください8)。
細胞診の報告書には、NILM、ASC-US、LSIL、ASC-H、HSILなどの略語が使われます。
ASC-USは「わずかな変化があるが意味がはっきりしない」結果で、当院では原則としてHPV簡易ジェノタイプ検査を行い、結果を踏まえて次の方針を決めます。
LSILは軽度の変化、ASC-Hは高度病変を否定できない変化、HSILは高度の異常を示します。腺細胞由来の異常(AGCなど)は別の観点から評価が必要です。これらは採取した細胞の所見であり、組織診で確定するCINの番号と同じ意味ではありません9,10)。

図2 細胞診の代表的な細胞像と、次に必要な確認。ASC-US・ASC-Hの判定が紛らわしい領域を帯で示しています。
HSILはN/C比の高い小型細胞、SCCは角化した異型細胞が混在する例を描いています。細胞診とCINは一対一には対応しません9,10,12,13)
コルポスコピーで子宮頸部を拡大して観察し、異常を疑う部位から組織を採取します。組織診では、異型細胞の広がりや成熟の様子、基底膜を越えて浸潤していないかを調べます。
CIN1は主に下層約1/3、CIN2は下層約2/3、CIN3は2/3を超えて異型が及ぶ病変の模式的な表現です。高度異形成と上皮内がんはいずれもCIN3に含まれます。腺系病変(AISなど)は別に評価します7,11)。

図3 組織診で確認する上皮と基底膜。細胞の形・成熟・広がりを示す説明用イラストです7,11)
通常の内診と同じように診察台で検査します。腟鏡で子宮頸部が見えるようにし、体の外に置いたコルポスコープで拡大して観察します。酢酸を塗ったときの白色変化や血管の様子などを確認し、必要な部位から生検鉗子で小さな組織を採取します。採取する場所と数は所見に応じて判断します11)。

図4 当院のコルポカメラCASIO DZ-C100による観察と生検の医学イラスト。腟鏡で露出した子宮頸部を体の外から拡大観察し、必要な部位から小さな組織を採取します11)
予約と結果の確認
婦人科の初診枠でご予約ください。検診結果票、過去の細胞診・HPV検査結果、紹介状があればお持ちください。
必要な検査の判断
ASC-USでは原則としてまずHPV簡易ジェノタイプ検査を行います。HPV検査のみの場合は、生検後の生活制限はありません。LSIL、ASC-H、HSILなどでコルポスコピーが適切と判断した場合、生検の条件が揃えば同日に組織採取まで行えます。
コルポスコピー下生検
子宮頸部を拡大観察し、異常が疑われる部分を狙って採取します。診察・説明を含めて約15分を目安としていますが、所見や必要な処置により変わります。
結果説明と方針
組織診の結果を説明し、経過観察、追加検査、治療または専門施設への紹介を決めます。
ASC-USと指摘された方は、当院では原則としてまずHPV簡易ジェノタイプ検査を行います。
HPV検査のみの場合は、以下に示す生検の条件に合わせて受診日を調整する必要はありません。検査当日・翌日の安静や、飲酒・性行為・運動の制限も不要です。結果に応じて、後日コルポスコピーなどをご案内します。
以下は、組織を採取する「生検」を受ける方の条件です。HPV検査のみを受ける方には適用されません。LSIL、ASC-H、HSILなどで同日生検を希望する方は、ご確認ください。条件を満たしていても、妊娠の可能性、内服薬、診察所見などによっては別日に行う場合があります。
生検後は局所に止血剤を使用して止血を確認します。当院で止血用のガーゼを入れた場合は、原則として6時間後にご自身で抜いていただく方法をご案内します。
院内で長時間お待ちいただく必要は通常ありません。検査当日と翌日は飲酒、性行為、激しい運動を避けてください。出血が多い、ガーゼを抜けない、強い腹痛や発熱がある場合は当院にご連絡ください。実際の注意事項は、検査当日の説明を優先してください。
検診で異常を指摘された方は婦人科の初診枠をご予約ください。検診結果票や過去のHPV検査結果をお持ちください。ASC-USでHPV検査を受ける方は、生検の条件に合わせて受診日を調整する必要はありません。
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13) Bukhari MH, Saba K, Qamar S, Majeed MM, Niazi S, Naeem S. Clinicopathological importance of Papanicolaou smears for the diagnosis of premalignant and malignant lesions of the cervix. J Cytol. 2012;29(1):20–25. doi:10.4103/0970-9371.93213.
文献確認日:2026年10月1日。診療の運用条件は当院の方針として記載しています。
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