2025年10月31日

生理の量が多い・レバーのような血の塊が出る…。それは、子宮筋腫などの病気が原因かもしれません。過多月経の原因と治療法を婦人科専門医がわかりやすく解説します。
1. 「生理の量が多い」とは?過多月経の定義
生理の量が多く、「ナプキンを1〜2時間ごとに替えないと漏れてしまう」「夜用ナプキンを重ねても間に合わない」などの状態が続く場合、過多月経(かたげっけい) の可能性があります。
医学的には「1回の月経で出血量が140mLを超える状態」とされますが、実際に量を測ることは難しいため、日常生活に支障を感じるかどうかが目安になります。
2. 過多月経の主な原因
過多月経には、ホルモンのバランスや子宮の構造異常など、さまざまな原因があります。代表的なものを紹介します。
(1)子宮筋腫
子宮の筋肉にできる良性腫瘍で、成人女性の3〜4人に1人が持っているとされます。
特に子宮の内側(粘膜下)にできる筋腫は、出血量を増やす原因になります。
(2)子宮腺筋症
子宮の筋層内に子宮内膜が入り込み、月経時に強い痛みとともに出血量が増える病気です。
30〜40代後半に多く見られます。
(3)子宮内膜ポリープ
子宮内膜にできるポリープ(良性の隆起)も、出血の原因となることがあります。
(4)ホルモンバランスの乱れ
排卵がうまく起きない「無排卵周期」などでは、子宮内膜が厚くなりすぎて、月経時に大量出血を起こすことがあります。
3. 子宮筋腫による過多月経の仕組み
子宮筋腫ができると、以下のようなメカニズムで出血量が増えます。
- 子宮内膜の面積が広がる
- 筋腫により子宮の収縮が妨げられ、血管が収縮しにくくなる
- 内側に突出する筋腫(粘膜下筋腫)が、内膜の血流を増やす
これらにより、レバーのような血の塊が出る・生理が長引く・貧血を起こすといった症状が出やすくなります。
4. 放置するとどうなる?―貧血や生活への影響
過多月経を放置すると、慢性的な鉄欠乏性貧血を引き起こすことがあります。
その結果、
- 倦怠感
- 動悸・息切れ
- めまい・立ちくらみ
- 集中力低下
など、日常生活にも影響が出ます。
また、貧血が進むと手術や妊娠・出産時のリスクも高まります。
5. 過多月経の検査
婦人科では、次のような検査を行って原因を特定します。
- 経腟超音波検査(子宮筋腫・腺筋症の確認)
- 子宮頸がん検査・内膜検査(悪性疾患の除外)
- 血液検査(貧血の有無、ホルモン状態の確認)
検査は痛みの少ないものが多く、初診日でも行えることがほとんどです。
6. 治療法:原因と希望に合わせた選択を
過多月経の治療は、原因や年齢、今後の妊娠希望の有無によって変わります。
- ホルモン療法(低用量ピル、黄体ホルモン製剤など)
- IUS(子宮内黄体ホルモン放出システム:ミレーナ)
- 止血剤・鉄剤で症状を軽くする場合もあります。
- 子宮鏡下手術(筋腫・ポリープ切除)
- 子宮筋腫核出術(子宮内黄体ホルモン放出システム:ミレーナ)
- 子宮全摘術(症状が重く、妊娠希望がない場合)
(1)薬による治療
→ 局所的にホルモンを作用させて、出血を減らします。
(2)手術による治療
近年は低侵襲(体に負担の少ない)手術も増えており、短期間の入院で済むケースもあります。
7. 医師からのメッセージ
「年齢のせい」と思って放置してしまう方が多いですが、
生理の量が多いのは“体からのサイン”です。
子宮筋腫や腺筋症は良性の病気とはいえ、放置すると貧血や不妊の原因になることも。
気になる症状があれば、早めに婦人科で相談しましょう。
