2025年11月14日

子宮頸がんは、近年20〜40代の女性で増加しているがんのひとつです。
特徴的なのは、がん化する前の「異形成」という段階で発見できること。
その早期発見を可能にする検査が「子宮頸部細胞診(子宮頸がん検診)」です。
子宮頸部細胞診とは
子宮頸部細胞診は、子宮の入り口(頸部)の表面を綿棒やブラシで軽くこすり、採取した細胞を顕微鏡で観察する検査です。
痛みはほとんどなく、診察時間も数分程度で終了します。出血や強い痛みを伴うことはまれです。
この検査は子宮頸がんの原因であるヒトパピローマウイルス(HPV)感染によって生じる細胞の変化を早期に見つけることを目的としています。
HPVは性行為の経験がある女性の多くが一度は感染する非常にありふれたウイルスですが、ほとんどの場合は自然に排除されます。
一方で、一部の高リスク型HPVが持続感染した場合、数年〜十数年かけて異形成を経てがん化することがあります。
検査結果について
検査結果は、かつては「クラス分類(クラスI〜V)」で表されていましたが、現在はベセスダシステム(Bethesda system)が主流です。
代表的な結果と意味は以下のとおりです。
NILM:問題ありません。次回は通常通りの検診を。
ASC-US:軽度の異常があるが、炎症や一時的変化の可能性。多くは自然に改善します。
LSIL:HPV感染に伴う軽度の変化。状況に応じて精密検査、もしくは半年〜1年後の再検査が推奨されます。
HSIL:がんに進行する可能性があり、精密検査(コルポスコピー検査・組織診)が必要です。
SCC:すでにがん細胞が検出された状態です。
異常の程度によって、追加検査や経過観察の方針が異なります。
軽度の異形成は自然に治ることも多く、必要以上に不安を感じる必要はありません。
精密検査
細胞診で異常が指摘された場合、次に行うのがコルポスコピー下生検です。
コルポスコピーと呼ばれる拡大鏡を用いて、子宮頸部を詳しく観察し、異常部分を選んで小さく組織を採取(生検)検査です。これにより得られた検体から子宮頸部組織診を行って診断します。
当院ではこのコルポスコピー下生検を院内で行っており、結果を迅速に確認することが可能です。
組織診の結果により、定期的な経過観察で十分な場合から、円錐切除術などの治療が必要な場合まで対応方針を判断します。
子宮頸がん検診を受けるタイミングと対象
日本では20歳以上の女性を対象に、2年に1回の子宮頸がん検診が推奨されています。
中央区では、指定医療機関で子宮頸がん検診(細胞診)を公費で受けることが可能です。
当院も中央区の検診受託医療機関として登録されており、区の検診クーポンを利用して受診できます。
自費での検診ももちろん可能です。
妊娠中やワクチン接種との関係
妊娠中でも子宮頸部細胞診は安全に実施できます。
出血しやすい時期でも、検査方法を工夫すれば胎児への影響はありません。
また、HPVワクチン(子宮頸がん予防ワクチン)によって高リスク型HPV感染の多くを防ぐことができ、若い世代を中心に接種が推奨されています。
検診とワクチンの併用が、子宮頸がんの予防には最も有効です。
まとめ:定期検診で未来を守る
子宮頸がんは、予防できる数少ないがんのひとつです。
早期発見・早期治療ができれば、妊娠・出産の可能性を残したまま治療を終えることも可能です。
「症状がないから大丈夫」ではなく、定期的な検診こそが健康を守る第一歩です。
中央区で子宮頸がん検診をご希望の方、または検査結果に不安がある方は、ぜひ一度ご相談ください。
産婦人科専門医が、丁寧に説明しながら必要な検査・経過観察を行います。
